フランス料理のメインディッシュであるお肉の焼き加減を見極めることは、プロの料理人として欠かせない重要なスキルです。
お客様に好みの焼き加減を聞く以上、責任重大です!
みなさんはお肉を焼くときに疑問に感じることはありますか?
レアやウェルダンはさすがに知っているけど、お肉の焼き加減はフランス語ではどう言うのですか?
先輩やシェフは触っただけでお肉の状態がわかるのはなぜですか?
他にどんな方法があるんですか。
なぜレアステーキはほとんど生なのに食べても大丈夫なんですか?
食中毒の危険はないのですか?
それぞれかんたんに結論からお答えすると、
お肉の焼き加減のフランス語表現を表にまとめるとこんな感じです。(火入れの若い順。)
英語 | フランス語 |
---|---|
ベリーレア (Very Rare) | ブルー(Bleu) |
レア (Rare) | セニャン (Saignant) |
ミディアムレア (Medium Rare) | ミ・セニャン(Mi-saignant) |
ミディアム (Medium) | ア・ポワン (A point) |
ミディアムウェルダン (Medium Well) | キュイ (Cuit) |
ウェルダン (Well Done) | ビアン・キュイ (Bien cuit) |
- お肉を切った断面の色
- お肉を触ったときの感触
- お肉の中心温度
ここから先は、それぞれの疑問をより詳しく解説していきます。
- お肉の焼き加減のフランス語表現
- お肉の焼き加減の見極め方3選
- 牛肉がレアでも食べられる理由と、他のお肉がレアで食べられない理由
それでは、いってみよう!
- ホテルでフランス料理を10年以上続けています。
- 現在はシェフ・ド・パルティ(部門シェフ)
- 調理師免許の上位資格、【西洋料理専門調理師】取得。
お肉の焼き加減│フランス語での言い方
お肉の焼き加減は大きく以下の6つに分類されます。上から火入れの若い順でリストアップしています。
英語 | フランス語 |
---|---|
ベリーレア (Very Rare) | ブルー(Bleu) |
レア (Rare) | セニャン (Saignant) |
ミディアムレア (Medium Rare) | ミ・セニャン(Mi-saignant) |
ミディアム (Medium) | ア・ポワン (A point) |
ミディアムウェルダン (Medium Well) | キュイ (Cuit) |
ウェルダン (Well Done) | ビアン・キュイ (Bien cuit) |
ブルー(Bleu)│ベリーレア
ブルーは表面だけを軽く焼いた状態で、レアよりも生肉に近いです。
食中毒のリスクがあるため、基本的には料理人から提案することはありません。
ブルーを知っている方はかなりのグルメと言えるでしょう。
たとえ新鮮なお肉を使用していても、安全を重視してブルーでの提供は避けるべきです。
セニャン (Saignant) │ レア
セニャンは「血がしたたるような」という意味があり、レアに相当します。
外側はしっかり焼かれているものの、中心部はほんのり温かく、赤い状態です。
ミ・セニャン(Mi-saignant)│ ミディアムレア
「ミ(mi)」は「半分・半ば」という意味があり、ミディアムレアに相当します。
ア・ポワン (A point) │ミディアム
ア・ポワンは「ちょうど良い」という意味があり、ミディアムに相当します。
肉の中心部が美しいロゼ色を帯びた状態です。
キュイ (Cuit)│ミディアムウェルダン
キュイは「焼けた」という意味があり、ミディアムウェルダンに相当します。
肉の中心部がロゼ色を通り越し、全体的にしっかりと焼かれた状態です。
ビアン・キュイ (Bien cuit) │ウェルダン
ビアン・キュイは「よく焼けた」という意味があり、ウェルダンに相当します。
肉の中心部まで完全に火が通った状態です。
お肉の焼き加減を見極める3つの方法
お肉の焼き加減は
- お肉の厚さ
- お肉の部位
- サシ(脂身)の入り方
などお肉の状態だけでなく、
使用するオーブンや低温調理器などの調理器具のクセによって仕上がりが変わるため、一概に◯℃で◯分と決めることは難しいです。
結局、経験を積むしかない……。
と言ったら元も子もないので、ある程度見極める方法をお教えします。
プロの料理人はお肉の焼き加減を見極めるとき、主に3つの方法をとっています。
- 断面の色で見分ける方法
- 弾力で確認する方法
- 中心温度で確認する方法
お肉の焼き加減を見極める方法①│断面の色で見分ける方法
最もわかりやすい方法は、お肉の断面を見ることです。
ミディアムの美しいロゼ色を基準とするとわかりやすいです。
焼き加減 | 状態 |
---|---|
レア | 中心部は鮮やかな赤色で、ほとんど生に近い状態。 |
ミディアムレア | 中心部は濃いピンク色で、周囲に向かって徐々に色が薄くなる。 |
ミディアム | 中心部はロゼ色で、全体的に均一な色合い。 |
ミディアムウェルダン | 中心部はほとんどロゼ色ではなく、茶色に近い。 |
ウェルダン | 中心部まで完全に火が通り茶色い。 |
見た目で判断できるので失敗が少ないです。
イタリアンのタリアータや鉄板焼レストランなど、カットしてから提供するなら、ステーキの焼き加減を見極める方法②│弾力で確認する方法。
トングや指で軽く押さえたときのお肉の弾力で確かめる方法です。
プロはこの方法で確認しますが、経験が必要なため、一朝一夕で習得するのは難しいです。
焼き加減 | 状態 |
---|---|
レア | 非常に柔らかい弾力。 |
ミディアムレア | 少し弾力があり、指で押すと軽くへこむ。 |
ミディアム | 中弾力があり、指で押しても形が変わらない。 |
ミディアムウェルダン | かなり弾力があり、指で押してもほとんどへこまない。 |
ウェルダン | 非常に硬い弾力。 |
言うのは簡単だけど、文字だけだとわかりにくいです……。
あくまで目安みたいなものですが、手を指で押して確かめる秘密の方法を教えます。
肉の焼き加減を指で確認する㊙テクニック
- 親指の付け根の下をプニプニする。(レアのやわらかさ)
- 親指と人差し指をくっつけて、親指の付け根の下を押す。(ミディアムレアのやわらかさ)
- 親指と中指をくっつけて、親指の付け根の下を押す。(ミディアのやわらかさ)
このあたりから、だんだん手の筋肉が固くなってくることが分かります。 - 親指と薬指をくっつけて、親指の付け根の下を押す。(ミディアムウェルダンのかたさ)
- 親指と小指をくっつけて、親指の付け根の下を押す。(ウェルダンのかたさ)
これならお肉を焼かなくても やわらかさが分かりますね!
ただし肉の厚さによっても状態は変わるので、あくまで目安みたいなものです。
指がないからできなかったよ…。
肉の焼き加減を見極める方法③│中止温度で確認する方法。
肉の厚さがある場合、芯温計を使って中心温度を測る方法が最も確実です。
お肉をカットせず提供するときや、ローストビーフに適した方法です。
焼き加減 | 中心温度 |
---|---|
レア | 48℃ ~ 50℃ |
ミディアムレア | 51℃~53℃ |
ミディアム | 53℃~58℃ |
ミディアムウェルダン | 60℃~65℃ |
ウェルダン | 68℃~ 70℃ |
ミディアムレアで仕上げたいつもりが、余熱でミディアムになっちゃった……。
ということがよくあります。
お肉を焼くときに役立つ、火入れに関する専門用語を解説した記事はこちら
肉は70℃を超えると旨味が流出し、固くなってパサついてしまいます。
ウェルダンだからといって火を通しすぎると、ステーキではなく「焼けた肉」になってしまうので、注意しましょう!
安全に料理を提供するために│なぜ牛肉はレアでも食べられるのか
そもそも、どうして牛肉はレアでも食べられるのですか?
食中毒菌の心配はありませんか?
牛肉がレアで食べられる理由は、牛肉の構造と細菌の分布に関連しています。
牛肉は筋繊維がしっかりと詰まってるため、細菌が内部に入り込みにくい構造を持っています。
細菌の多くは肉の表面に付着しています。
牛肉の表面をしっかりと加熱することで、サルモネラ菌や大腸菌などの有害な細菌を殺菌し、レアでも安全に食べられる状態になります。
鶏肉や豚肉は肉の内部まで食中毒菌が潜んでいるので、表面を焼くだけのレアでは食べられません。
牛挽き肉はレアで提供してはいけない
よくある勘違いですが、たとえ牛肉でも挽き肉はレアで提供してはいけません!!
牛肉はレアでも大丈夫だと、誤った認識でハンバーグをレアで出そうとする飲食店があれば要注意です。
ひき肉は、肉の内部と外部が混ざり合っているため、細菌が内部にも入り込みやすい状態になっています。
さらに、挽き肉にする調理器具「ミンサー」も無菌ではないため、器具から牛肉へ菌が付着し、増殖する可能性が高いです。
特に、病原性大腸菌O157は非常に危険で、少量の摂取でも重篤な食中毒を引き起こす可能性があります。
O157は加熱により死滅するため、挽き肉は内部までしっかりと加熱し、中心温度が75℃以上になるまで調理することが必要です。
牛肉だから全てが安心というわけではないのですね。
鶏肉や豚肉のレアは危険
食材によって、安全に食べられる中心温度は異なります。
鶏肉や豚肉には以下の食中毒菌が潜んでいます。
- サルモネラ菌
- カンピロバクター
- トキソプラズマ
牛肉と違い、これらの菌は肉の表面だけでなく内部にも存在するため、中心温度が68℃以上になるまでしっかりと加熱する必要があります。
生焼けの状態ではカンピロバクターなどの菌が残存し、食中毒のリスクが高まるため、必ず安全な中心温度と菌が死滅するまでの加熱時間を確認して調理しましょう。
まとめ
メインディッシュであるお肉の焼き加減をお客様のリクエストどおりに仕上げることは、責任重大な仕事です。
ベストな状態で提供できたときのお客様の感動は計り知れないものでしょう。
とはいえ、お肉の焼き加減を見極めるスキルは、一朝一夕では身につくものではありません。
基本を押さえ、実践を重ねることで確実に上達します。
まずは、先輩が焼き上げたお肉を触って確認し、自分の感覚と照らし合わせることが上達への近道です。
触って確かめる時は手袋を忘れないでね!!
食材の特性を理解することも重要です。
牛肉は表面の加熱でレアでも安全に食べられますが、挽き肉や鶏肉、豚肉は内部までしっかりと火を通す必要があります。
安全で美味しい料理を提供するために、常に焼き加減に注意を払いましょう。
この記事で学んだことを実践し、さらなるスキルアップを目指してください。
お客様に最高の一皿を提供するために、日々の努力を怠らないようにしましょう。
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