フランス料理の『ポタージュ』といえば,コーンポタージュやかぼちゃのポタージュをイメージする人は多いのではないでしょうか。
『ポタージュ』と『スープ』の違いをご存知ですか?
へ?野菜のクリームスープとそれ以外のことじゃないの?
- ホテルフレンチ勤務10年以上。現在はシェフ・ド・パルティ。
- 調理師免許の上位資格、【西洋料理専門調理師】取得。
- 詳しいプロフィールはこちらをどうぞ!!
それでは、いってみよう!
ポタージュとはフランス語で「汁物料理」のこと
見出しで書いてしまいましたが、結論から言いますと、
『ポタージュ』とはフランス語で『汁物料理』全般を指す言葉です。
そうなんだ!
解決しました!またね!
🐾~おわり~🐾
……茶番は置いといて、ここで終わると水だけのスープより味気ない記事ですのでもう少し深堀りしていきましょう。
ポタージュにはいくつか分類がある
『ポタージュ』は細かく見るといくつかの分類がありますが、大別すると以下の3つに分けられます。
- スープ(soupe)
- ポタージュ・リエ (potage lié)
- ポタージュ・クレール (potage clair)
図解で解説するとこんな感じです。
スープ(soupe)
食材を水やブイヨンで煮込み、濾さずに食べる具だくさんな汁物料理を指します。
よく見るとフランス語綴りでは「soupe」となっています。
日本語で西洋の汁物料理をイメージする「スープ」は英語の『soup』が由来です。
ただし、具沢山のスープでも、具の食材を丁寧に切り揃えて高級感を出した場合、後述する『ポタージュ・タイエ』と分類することもあります。
代表的な料理 | フランス語 | 概要 |
ポトフ | pot-au-feu | 肉や野菜を鍋で煮た料理。 豚肉、キャベツ、ジャガイモなどをよう使う。 |
ガルビュール | garbure | 生ハムやいんげん豆などで作るスープ。 |
オニオングラタンスープ | gratinee | 飴色になるまでじっくり炒めた玉ねぎのスープにパンとチーズをのせて焼き上げる料理。 |
ポタージュ・クレール (potage clair)
澄んだポタージュを『ポタージュ・クレール』 (potage clair)といいます。
主にコンソメのことを指します。
本格的なコンソメは1から作ろうとすると3〜4日はかかります。
ポタージュ・リエ(potage lié)
とろみがついたポタージュを『ポタージュ・リエ』(potage lié)といいます。
『リエ』とは『とろみをつける』という意味があります。
ソースにとろみを付ける際にもよく使う言葉なので、フランス料理を専門とするなら必ず覚えておきたい用語です。
ポタージュ・リエを更に細分化すると、次のように分けられます。
ポタージュ・タイエ(potage taillé)
前述の『スープ』の中でも、食材をキレイに切り揃えた場合、『ポタージュ・タイエ』と言います。
キュルティヴァチュール(トマトのないミネストローネのようなスープ。)などが挙げられます。
代表的な料理 | フランス語 | 概要 |
キュルティバチュール | potage cultivateur | 色紙切りの野菜とベーコンなどで作ったスープ。トマトのないミネストローネのようなもの。農夫風ポタージュ。 |
タイエtailléは「切り揃えた」という意味があります。
※ただしスープとポタージュ・タイエの使い分けは厳密ではなく、曖昧な部分もあるそうです。
ポタージュ・ピュレ (purée)
デンプン質を含む野菜をブイヨンで煮込んだ後、裏漉しまたはミキサーでピューレ状にし、生クリームや牛乳を加えたもの。
私達が一般的にイメージする『野菜のクリームスープ』のことです。
代表的な料理 | フランス語 | 概要 |
パルマンティエ(ジャガイモ) | parmentier | ジャガイモのポタージュ・ピュレ |
マイス(コーン) | mais | コーンのポタージュ・ピュレ |
クレシー(人参) | crecy | 人参のポタージュ・ピュレ |
ポタージュ・ピュレ(野菜のクリームスープ)の種類やレシピ、メニューづくりのヒントについて詳しく解説した記事はこちら!!
ビスク(bisque)
エビやカニなど甲殻類のだしで作るポタージュ。
代表的な料理 | フランス語 | 概要 |
オマール海老のビスク | bisuque de homaerd | オマール海老のだしで作るビスク。 |
カニのビスク | bisuque de crebe | ワタリガニなどの蟹のだしで作るビスク。 |
※厳密にはポタージュにはさらに、クレーム (crème)、ヴルーテ (velouté)という分類もありますが、この記事では汁もの料理としての『ポタージュ』を解説したいので割愛します。
スープの起源とポタージュと呼ばれるまでの変遷
順番は前後しますが、ここでは『スープ』の起源を短めに解説していきましょう。
元来は肉や野菜を煮込んだ出汁(ブイヨン)に硬いパンを浸けてふやかし、粥状になった料理を『スープ』と呼んでいました。
汁のほうじゃなくて、ふやかしたパンの方が『スープ』だったんだ!
現代でもスープの浮身にクルトンが使われるのは、その名残です。
15世紀〜18世紀にかけて、富裕層たちの間で、とろみのある濃い煮汁を『ポタージュ』、食材を水やブイヨンで煮込み、濾さずに食べる汁物は田舎の庶民が食べる『スープ』(soupe)と呼ぶようになりました。
洗練されて高級感のある汁物を『ポタージュ』、昔ながらの田舎風の郷土料理を『スープ』と区別したとイメージするとわかりやすいです。
この記事における、スープからポタージュと呼ばれるまでの変遷はwikipedeliaを参考に短くまとめています。
これ以上は長くなって脱線するので割愛しますが、もっと詳しく知りたい方はこちらをどうぞ。
味噌汁もポタージュ。
ちなみに味噌汁もポタージュです。
その場合、『potage étranger』(ポタージュ・エトランゼ)と表記し、
(フランスから見て)『外国のスープ』というニュアンスになります。
ミネストローネやボルシチ、クラムチャウダーも『potage étranger』(ポタージュ・エトランゼ)『外国のスープ』です。
まとめ
この記事では『ポタージュ』と『スープ』の違いについて解説していきました。
最後に、ポタージュの簡単な分類の図解を再掲します。
おかげで明日からこの知識がきっと役に立つよ!
しかしながら、ここまで解説してこんなこと言うのもおかしいですが、
実際の現場では『ポタージュ』と『スープ』の呼び名を細かく使い分けているわけではないので、今回の内容は実践ではあまり役に立たないです。(小声)
そんな……。
ただ、一流シェフの中には、「突き詰めていけばソースもポタージュに分類するのではないか。スープこそが究極のソースなのではないか。」という料理哲学のもと、メニュー構成を考えている方もいます。
レシピやノウハウなどの基本を学ぶのも大事ですが、いずれこのような知識が、新しい料理を生み出す際の発想とひらめきのヒントになるかもしれません。
今回は知識・教養としての内容となりましたが、今後、ポタージュのバリエーションやレシピを紹介した記事も作成予定ですので、お楽しみに!
このブログではこれからも、新人・見習い料理人のみなさんが、「明日からもまたがんばろう!!」と思える記事を発信していきます!
一記事一記事、心を込めて書かせていただきます。
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