フランス料理の基本を確実に身につけるために、火入れの技術を深く理解する必要があります。
フランス料理で「火入れ」のことを「キュイッソン(cuisson)」と言います。
火入れ(キュイッソン)に関する調理用語にはデグラッセやレデュイールなど聞き慣れないフランス語も多く、難しく感じますよね。
さらに近年はスチームコンベクションや既製品に頼ることが増え、新人や見習いコックさんがアロゼやモンテといった基本テクニックを使う場面も減っているように感じます。
ことばは知っていても、具体的にどうやっているのか、なぜその工程が必要なのか考えていなかったです。
この記事では、プロの料理人マオネコが1,600以上の単語から厳選した、フレンチの火入れのときによく使う調理用語を20個解説します。
- ホテルでフランス料理を10年以上続けています。
- 現在はシェフ・ド・パルティ(部門シェフ)
- 調理師免許の上位資格、【西洋料理専門調理師】取得。
それでは、いってみよう!
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この記事の参考文献
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アロゼ (arroser)│かける・そそぐ
アロゼとは、肉や魚を焼きながら、上からバターや油・肉汁などをかけること。
アロゼをすると食材が乾燥せず、ジューシーに仕上げられます。
とくに、 厚みのある肉や魚をアロゼすることで、中心までゆっくりと火を通す役割も兼ねています。
アロゼはフレンチやイタリアンを専門とする上では欠かせないスキルです!最優先で覚えましょう!!
ポイント
- アロゼは食材を乾かさないために行う。
- アロゼを行うことで、バターの風味や肉汁の旨味を加えることができる。
- 熱い油や肉汁をかけることで、食材の中心にも火が通りやすくなる。
- 食材に火が入りすぎないよう、アロゼをする時は弱火にする。
- 程よく焦げたバターや肉汁の色をつける役割もある。
詳しくはこちらの動画で分かりやすくアロゼをしているシーンがあるので、参考にしてください。
アンフュゼ (infuser)│煮出す・煎(せん)じる
アンフュゼは、液体にハーブやスパイスなどの香り・風味を抽出すること。
ソースやスープに深みを与えるために行います。
エキュメ (Écumer)│アクをとる
エキュメは、スープやソースに浮かぶアクを取り除くこと。
キャラメリゼ (Caraméliser)│(砂糖をふって)焦がす
キャラメリゼは、砂糖を加熱してキャラメル状にすること。
フルーツをキャラメリゼする時や、ガストリックを作る時によく使う言葉で、用途によって焦がし方が変わります。
ガストリックは砂糖とビネガーをキャラメリゼしてソースにコクを加える隠し味のことです。
キャラメリゼのコツ│泡が立つ瞬間や においを覚えよう。
キャラメリゼの最大のコツは
- 泡の立ちはじめるタイミングを見逃さないこと。
- においを覚えること。
水分や食材を加えるのが早すぎると薄くてコクのないカラメルになりますが、焦がしすぎると苦くなってしまいます。
説明を聞くと簡単そうですが、実際にキャラメリゼをやってみるとかなり難しいですね。
上達するには数をこなすしかありません。
先輩がキャラメリゼするときは、コツやタイミングを見て覚えるのが重要です。
キャラメリゼの工程がよく分かる動画を紹介します。
キュイッソン(cuisson)│火入れ
キュイッソンは、「火入れ」のこと。
調理中に使うことはありませんが、専門書などで「キュイッソンの哲学」や「キュイッソンのコツ」のような表現で出てくるので、覚えておきましょう。
グラチネ (Gratiner)│チーズやパン粉で焼き色をつけること
グラチネは、料理の表面にチーズやパン粉を乗せて焼き色をつけること。
グラタンの語源です。
グラタンと言うと、ホワイトソースをかけたポテトグラタンなどをイメージしますが、フレンチではチーズやパン粉をのせて焼く料理や調理法のことを指します。
シャンブレ (Chambrer)│(食材を)室温にすること
シャンブレは、食材を室温に戻すこと。
よくレシピに書いてある「ステーキ肉を焼く30分前に冷蔵庫から取り出しておく 」というあれのことですね。
スュエ (Suer)│ごく弱火でソテーすること
スュエは、食材を低温でゆっくりと炒め、汗をかかせるように水分を引き出すこと。
たとえばスープやソースを作る時「エシャロットをスュエする」と言います。
※レシピによっては「シュエ」や「スエ」と表記されることもありますが「スュエ」が正しいです。
「スュエ」発音が難しいですね。
意味もなく言いたくなるね。
スュエ。
デグラッセ (Déglacer)│鍋底に残った旨味を溶かこと
デグラッセは、焼いた肉の鍋に液体(ワインやブイヨンなど)を加えて、鍋底に残った旨味を溶かし出すこと。
基本的にデグラッッセした液体でソースを作ることもよくあります。
デグラッセの工程がよく分かる動画を紹介します。
デグレッセ (Dégraisser)│脂をとること
デグレッセは、スープやソースの表面に浮いた脂を取り除くこと。
先ほどのデグラッセと一文字違いで紛らわしいですが、全く別の意味です。
ブランシール (Blanchir)│茹でる
ブランシールは 茹でること。
主に野菜を下茹でにする時に使います。
パティシエの製菓用語だと意味が変わり、その場合 卵と砂糖を白っぽくなるまで混ぜることをブランシールといいます。
フランベ (Flamber)│アルコールをふりかけて火をつける
フランベは、料理にブランデーやラムのようなアルコール度数が高い酒をかけて火をつけ、風味を加える技法。
鉄板焼レストランでは、見栄えも良いことからお客様の前でフランベのパフォーマンスをしますが、ボヤ騒ぎやお客様に引火させて火傷を負わせた事例もあります。
安全を重視して不必要にやらないほうが良いでしょう。
ミジョテ (Mijoter)│とろ火で煮る
ミジョテは、食材をとろ火でゆっくりと煮込むこと。
フォンやブイヨンを煮るときによく使う表現です。
食材が焦げないように、たまにスパテラやヘラでかき混ぜましょう。
メイラード反応 (Réaction de Maillard)
メイラード反応は、糖とアミノ酸(タンパク質)が加熱により褐色化反応を起こし、風味豊かな成分を生成する現象。
身近な例を挙げると
- 食パンをトーストしたとき、香ばしく焼き色が付くこと
- ステーキが褐色に焼き上がること
がメイラード反応です。(アミノカルボニル反応とも言います。)
調理用語というより化学反応ですが、火入れの技術を理解する際、必ず出てくるワードです。
モンテ (Monter)│バターでとろみをつけること
モンテは、ソースやポタージュにバターを加えてとろみをつけること。
コーンスターチや片栗粉でとろみをつける「リエ」と違い、バターのコクと美しい艶(つや)を加えられます。
冷たいバターを少しずつ加えることで、分離することなくソースと一体化(乳化)し、濃度がつきます。
こちらの動画で、一瞬ですが赤ワインソースをバターモンテするシーンがあります。
リエ (Lier)│とろみをつける
リエは、ソースやスープにとろみをつけること。
コーンスターチや片栗粉でとろみをつけるのが一般的ですが、卵黄や動物の血でリエするソースもあります。
リソレ (Rissoler)│焼き色をつけること
リソレは、食材の表面に強火で焼き色を付けること。
温度が低いと焼き色がキレイにつかないのでフライパンの温度を高く保つことがポイント。
ポワレやソテーが「調理法」の名称なのに対し、リソレは単に焼き色を付ける「工程」を指します。
\🐾ポワレやソテーはこちらの記事で詳しく解説しています。🐾/
ルポゼ (Reposer)│食材を休ませること
ルポゼは、焼いたお肉を休ませること。
ルポゼをすると肉汁を均一に浸透させ、お肉をジューシーに仕上げられます。
ルポゼをしないうちに焼き上がったお肉を切ると、肉汁が溢れてうま味が流れ出てしまうので気をつけましょう。
休ませる時間は食材の大きさに応じて調整しますが、一般的に5〜10分が目安。
前半に紹介したアロゼの動画の中盤(7:10)でも、ルポゼする工程があります。
レデュイール (Réduire)│煮詰めること
レデュイールは、液体を煮詰めて量を減らし、濃縮すること。
赤ワインソースやブイヨン、スープなどを煮詰めるときに使う表現で、ソースが命のフランス料理では欠かせない工程です。必ず覚えておきましょう。
レデュイールした状態のものを「レディクション」と言います。
真空調理 │キュイソン スゥ ヴィッド (Cuisson sous vide)
真空調理とは、食材を真空パックに封入し、低温調理器による湯せんやスチームコンベクションで調理する方法。
厨房では普通に「真空調理」と日本語で言うので、フランス語表記はあまり気にしなくて良いです。
真空調理と低温調理の違い
真空調理と低温調理はちがうのですか?
真空調理は、真空パックを用いる点が特徴。
真空調理は、ブレゼやビーフシチューなどを100℃以上で加熱するレシピもあるので、必ずしも低温調理をするわけではありません。
一方、低温調理は、80℃以下の低温で加熱する調理法。
低温調理は、真空パックを使用しない場合もあり、オーブンや鍋を使って調理する方法や、真空パックの代わりにジップ袋を使うこともあります。
昔ながら調理法で作るコンフィが低温調理の代表例です。
コンフィについて詳しく解説した記事はこちら
真空調理の注意点
真空パックが破れると、液体が漏れ出し食中毒の危険性が高まるだけでなく、火入れの熱循環が悪くなり味付けと仕上がりに影響します。
また真空調理で低温調理をする場合、食中毒のリスクを避けるために、適切な温度管理をしなければなりません。
基本的に、食材の中心温度を75℃・1分以上の加熱、または同等の効果がある火入れを行えば、ほとんどの食中毒員を死滅させ安全に食べることができます。1
\低温調理と食中毒に関する安全対策はこちらの記事で詳しく解説しています。/
まとめ
火入れの技術(キュイッソン)は、料理の質を大きく左右します。
フランス料理の調理用語を理解し、そのテクニックを身に付けることは、見習い料理人にとって重要なステップです。
今回紹介した火入れの技術を日々の仕事に取り入れてみましょう。
言葉として何となく知っているテクニックも、動画と一緒に学べて勉強になりました!
まずは先輩に聞いたり、動画でコツをしっかりと学び、仕事に活かしましょう。
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他にもフレンチの調理用語を解説した記事がありますので、ぜひ読んでみてください!