超初心者向けに解説│【ポワレ】とはフライパンで焼き上げた料理のこと。
こんにちは!フランス料理人のマオネコです!
フレンチレストランに食事に行ったとき、
【白身魚のポワレ】や【牛フィレ肉のポワレ】のようなメニューをよく見かけますよね。
そんなとき、
「ポワレってどんな料理だろう。」
「ポワレってどういう意味だろう。」
と気になったことはありませんか?
先に結論からお答えすると、
【ポワレ】(Poêler)とはフランス料理の調理法で、基本的には肉や魚をフライパンで焼いて仕上げる料理のこと。
もっと簡単に言うと、【ソテー】と思って構いません。
料理人ではない方はここまでの知識で十分です。
レストランで次の料理が運ばれるまで、【図1】のようにワインでも飲みながら恋人や友達に自慢しましょう。
【ポワレ】は【ソテー】のことなんだよ!キリッ
~🐾おわり🐾~
妙だな……。
さっき、「料理人ではない方はここまでの知識で十分です。」
って言っていたよ。
――しかし、厄介なことに、厳密には【ポワレ】とソテーちょっと違います。
実はここからがこの記事の本題です。
プロの料理人なら知っておきたい│【ポワレ】にはもっと複雑な定義がある。
本来【ポワレ】にはもっと複雑な定義があります。
【ポワレ】についてはプロのシェフでも様々な解釈があり、新人や見習いの料理人ならすぐに理解するのが難しい問題です。
この記事にたどり着いた料理人の方にとって知りたいことは冒頭のようなことではなく、もっと詳しい内容でしょう。
ここから先はプロの料理人向けに、【ポワレ】について更に深堀りしていきます。
とは言っても、
実際はプロでも明確に使い分けているわけではありませんが、
お客様や後輩に質問された時に即座に答えられたほうがかっこいいし、
料理やレシピの理解度を深めるためには調理の技法の定義を学ぶのは決して無駄ではありません。
少し難しいですが、一緒に勉強しましょう!
- ホテルでフランス料理を10年以上続けています。
- 現在はシェフ・ド・パルティ(部門シェフ)
- 調理師免許の上位資格、【西洋料理専門調理師】取得。
- 【ポワレ】の本来の意味と、近代の意味の違い。
- ロティやムニエルなど似た調理法と【ポワレ】の違い。
それでは、いってみよう!
※よく、【ポワレ】と【ヴァプール】の違いについて質問がありますが、全く違う調理法なのでこの記事では出てきません。
「ヴァプール」についてはこちらの記事で詳しく解説しています。
プロ向けの解説│ポワレ(poêler)とは
【ポワレ】(poêler)は「フライパンで焼く」調理法であることす。
これはフランス語でフライパンを意味する「ポワル」(poêlé)が由来とされています。
しかし、その定義は曖昧で、
フランス料理の父、エスコフィエによる古典的料理と現代の調理法とでは、
時代の変化とともに【ポワレ】の解釈も様々になってきています。
まずは古典的な本来の【ポワレ】について解説していきます。
ポワレとは│古典的な解釈
古典的な【ポワレ】は
「大きな塊肉や魚1尾分をフライパン(鍋)で焼き色を付けてから、その煮汁とともに蓋をして、フライパンごとオーブンに入れて仕上げる。」
という手法を取っていました。
【ポワレ】は【蒸し焼き】と訳されます。
ふだん私達が仕事でやっている【ポワレ】と近いような、かけ離れているような不思議な感じがしますね。
後述するロティ(ロースト)とも似ていますが、ロティよりしっとりとした仕上がりになるのが特徴。
エスコフィエは【ポワレ】のことを【特別なロティ】と表現しており、ポワレをロティ(ロースト)の一部として扱ってきました。
次は近代的な【ポワレ】について解説していきます。
ポワレとは│近代的な解釈
時代の変化とともに、肉や魚も大きな塊ではなく、1人前~2人前のポーションにカットしてから調理することが主流となり、【ポワレ】の焼き方は少しずつ変化します。
古典的な解釈では、【ポワレ】は「焼き色を付けたら煮汁とともに蓋をして、オーブンで蒸し焼きにする。」というのは前述のとおりですが、
現代では
- 蓋をせずオーブンに入れて短時間で仕上げる。(≒ロティのような仕上げ。)
- オーブンに入れず、フライパンのみで仕上げる。(≒ソテーのような仕上げ。)
上記の場合でも【ポワレ】と表現します。
結局のところ、プロでも厨房で明確に使い分けているわけではありません。
強いて言うなら、
オーブンで短時間で仕上げるときやそのままフライパンだけで仕上げるときは【ポワレ】。
じっくりと時間をかけて仕上げる場合は「ロティ(ロースト)」と使い分けています。
ポワレに関するおすすめ書籍
ポワレと似た調理法の違いについて│ロティ・ムニエル・ソテー・グリエ
ここまでポワレについて学んできて、おそらくこんな疑問が湧いてきたのではないでしょうか。
- オーブンで仕上げるということはポワレとローストはどうちがうの?
- 焼くってことはムニエルやソテーとどう違うの?
- グリエも焼き色をつけるけどどう違うの?
順に解説していきます。
ポワレとロティ(ロティール/ロースト)の違い
【ロティ(rôti)】とは、食材をオーブンで焼く調理法。
ロティール(rôtir)という表現もありますが、名詞か動詞の違いです。
英語の「ロースト」の方が馴染み深いですね。
「食材に焼き色を付けてからオーブンで焼く。」というのは【ポワレ】と同じですが、
ロティの場合はパイ皿やバットに移してから蓋をせず、長時間かけてじっくり火を通すのが特徴です。
近年では【ポワレ】との使い分けが曖昧になってきていますが、
- 小ポーションの魚や肉をオーブンで短時間で仕上げる場合は【ポワレ】、
- 大きな肉を長時間かけて仕上げる場合は【ロティ】と言うことがほとんどです。
ただし、例えばメニュー表記する際、
- 白身魚のポワレ
- 牛フィレ肉のポワレ
と記載すると同じ料理が続いてるようで違和感があるので、
- 白身魚のポワレ
- 牛フィレ肉のロティ
このように、実際には牛フィレ肉を【ポワレ】で仕上げていたとしても、メニュー表記の際は視覚的な問題もあるため、シェフの感覚で決めることもあります。
メニュー表記の例
- 前菜
- スープ
- 白身魚のポワレ
- 牛フィレ肉のポワレ
※ポワレが2回続くと同じ料理が続いて見える。
- 前菜
- スープ
- 白身魚のポワレ
- 牛フィレ肉のロースト
※実際には牛フィレ肉をポワレにしても、メニュー表記を変えることで違う料理が出ているように見える。
正直、お客様からしたら、美味しかったらネーミングはどっちでも良いので。
ポワレとムニエルの違い
「ムニエル(meunière)」は、魚に小麦粉をまぶし、バターで焼く調理法。
【ポワレ】同様、オーブンで仕上げることもありますが、衣のカリッとした食感を残したいため、蓋をして蒸し焼きにすることはありません。
ポワレとソテーの違い
ソテー(sauté)は、フライパンで野菜などを炒める調理法。
肉や魚を焼くときにも【ソテー】と言う事もありますが、それは
お客様や初心者の方に分かりやすく説明するために使います。
逆に、【ポワレの】本来の意味は「煮汁と共に蒸し焼きする」ですので、
「野菜をポワレする」とは言いません。
ポワレとグリエの違い
グリエ(grillé)は英語でグリルであり、網焼きのこと。
昔はオーブンに金網を敷き、そこで食材を直火焼きすることで、格子状の焼き色をつけていました。
現代はグリル板を使うのが主流です。
グリエは直火焼きの熱輻射を活かした調理法で、【ポワレ】より香ばしく焼き上がるのが特徴ですが、
フレンチの火入れに関することを詳しく書こうとするとこの記事の大筋から脱線してしまうので今回は割愛させていただきます。
簡単な表にまとめるとこんな感じ。
調理法 | 解説 |
---|---|
ポワレ(poêler) | 本来は「フライパンで食材に焼き色を付けたあと、蓋をして煮汁とともにそのままオーブンで蒸し焼きにする。」 現代では必ずしも蓋をしなかったり、オーブンに入れずフライパンのみで仕上げたりと曖昧になってきている。 |
ロティ(rôti) | 食材をオーブンで焼き上げる調理法。 比較的長時間かけてじっくりと焼き上げる場合に用いる表現。 |
ソテー(sauté) | 炒める時に用いる表現。蓋をせず火を入れる。 |
ムニエル(meunière) | 魚に小麦粉をまぶしてバターで焼き上げる焼き方。 |
グリエ(grillé) | グリル板などで格子状の網焼きにする焼き方。直火焼き。 |
ポワレに関するおすすめ書籍
まとめ
今回の記事ではフランス料理の代表的な調理法の1つである【ポワレ】について深堀りしていきました。
これまでの内容をまとめるとこんな感じです。
- 【ポワレ】(poêler)は本来、「焼き色を付けてから蓋をして、オーブンで蒸し焼きにする」こと。
- ただし近年は必ずしもそうするわけでなく、ロティやソテーとの使い分けが曖昧になっている。
火入れに関する用語を解説した記事もあります。参考にしてください。
いずれ【ポワレ】を活かしたレシピの紹介をしていきたいので、楽しみにしていてください。
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